これは月刊自然医学(2003/6月号)に掲載させている森下先生の巻頭随想の解説編です。
2003/6 反「減塩論」(其の六)NaCl中心の生体金属元素群
原始状態にある海の中で誕生した“発生したての生命体”は、初期の成長発展段階で、大きく二つの系統に分かれた。
その一つは、「動物グループ」。これは、ナトリウム(Na)・塩素(Cl)=「食塩」を好む傾向を強く持ち、自分から行動を起こして周りの環境に働きかけていくといった独自の摂食スタイルによって、進化発展を遂げてきたのである。
もう一つは、「植物グループ」。これは、カリウム(K)・マグネシウム(Mg)に高い親和性があり、受動的な行動様式を持っている。
生存・活動エネルギーを得る方法としては、「根」から生体ミネラルの吸収を行い、「緑葉・葉緑素」が営む“光合成”によって生産された生命物質を活用してきたのである。
前者の、活動的であることが基本体制となっている生物である「動物」においては、特に高等動物になるほど、食塩がきわめて重要な役割を演ずるようになってきたのも、当然至極の話と言えよう。
その食塩の生理的作用は多岐にわたっており、それを具体的に一つ一つ挙げることはとてもできないが、強いて主だったものを挙げると次のようになる。
- 第一には、消化に関する作用が挙げられる。消化管から分泌されるそれぞれの消化液…特に胃液の分泌を高める。それによって、消化管の蠕動運動を促して、腸内に於ける異常発酵を抑制する。
- 第二に、血管や心臓内壁に付着している不要物を溶かして取り除くことによって、脈管系…血管やリンパ管などの老化防止を図る。
- 第三に、内臓全般の組織機能を活性化して、各臓器の生理機能と新陳代謝をスムーズにする。
- 第四に、脳神経系の機能を活性化することによって、血液浄化―→自然治癒力増進を連鎖的に実現させて、最終的には健康・長寿に導く。
- そして第五に、直接的な作用として、防腐・殺菌・解毒の著しい効果をもたらす。
以上にあげた、「食塩が生理機能に及ぼす、多彩な作用」は、ナトリウム(Na)と塩素(Cl)の二つが結びついた化合物による単独作用とは、必ずしも言い切れない。
自然態の食塩の中には、それが形成される過程で「強力な還元作用を持っている生体ミネラル」が自然な形で含まれているが、それらの強力援軍があってこその、目覚ましい効用なのである。
そういった自然塩に含まれる各種生体ミネラルは、それぞれに、人体の内臓機能と特別の親和性を持っており、高密度の分布を示しているのである。例えば、次のような具合だ。
- 亜鉛…Zn――脳下垂体、生殖腺
- モリブデン…Mo――脳全体
- バリウム…Ba――眼球、網膜
- クロム…Cr――脳下垂体
- ニッケル…Ni――膵臓
- カドミウム…Cd――腎臓
- リチウム…Li――肺
- ストロンチウム…Sr――骨
- 硼素…B――脂肪組織
- コバルト…Co――血液、筋肉
- 銅…Cu――肝臓
- 鉄…Fe――腸壁
こうした事実は、生体ミネラルが、内臓諸機能にとって決して切り離すことのできない、それなくしては本来的機能自体が成り立たないまでの、絶対的な深い関りをもっていることをはっきりと物語るものである。
結局のところ、食塩は、健康・長寿を実現するための切り札である「食毒・薬毒の排除」を図る上で、必須不可欠なものだ。
そして、さらに本質面をいえば、食塩を摂取することは、「生命という存在を最初に生み出した原始海洋」を「人体における最大のパワースポットである臍下丹田」に丸ごと取りこむ作業に他ならないのである。
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